浄土真宗の開祖。藤原氏一族である日野有範の長男。幼名を松若麿、
松若殿、松若丸などと伝える。
『御伝鈔』上巻1弾によれば、9歳のときに慈鎮和尚かしょう（慈円）について出家し、範宴はんねんと名乗ったという。以後20年間、比叡山で修学し、常行三昧堂の堂僧（『恵信尼消息』第1通）などをつとめていたとみられる。
建仁元年（1201）29歳の時、比叡山を下りて六角堂に参篭し、聖徳太子の夢告により法然を訪ね、阿弥陀仏の本願に帰し、その門弟となった。
元久元年（1204）、「7箇条起請文」に「僧綽空」と署名している。
翌元久2年（1205）には、『選択集せんじゃくしゅう』を付属されてこれを書写するとともに法然の真影を図画し（化身土巻）、夢告により釈空しゃっくうの名を善信を改めたという。また、法然のもとで学ぶ間に恵信尼と結婚したとみられている。
建永2年（承元1・1207）念仏弾圧（承元の法難）によって、法然らとともに処罰され、流罪となって越後国府（現在の新潟県上越市）に赴いた。そして自らを非僧非俗と位置づけ、愚禿ぐとくと称した。
建暦元年（1211）赦免されると、建保2年（1214）妻子とともに関東に移住した。常陸国稲田（現在の茨城県笠間市稲田）を中心に伝道の生活を送る一方、『教行信証』を著し推敲を重ねた。
62、3歳の頃、京都に帰ると、御消息によって関東の門弟を教化きょうけするとともに、「三帖和讃」をはじめ多くの著述を残した。
建長初年の頃から、関東で法義理解の混乱が生じ、息男慈信房善鸞を遣わしたが、かえって異義を生じ、建長8年（1256）、善鸞を義絶した。
弘長2年11月28日、弟 尋有じんうの房舎で90年の生涯を終えた。なお、弘長2年のほとんどの期間は西暦1262年に該当するが、11月28日は、新暦の1月16日にあたるので、没年を1263年と表示する。その選述は、主著『顕浄土真実教行証文類』のほか、『浄土文類聚鈔』『入出ニ門偈頌』『愚禿鈔』『浄土和讃』『高僧和讃』『正像末和讃』『浄土三経往生文類』『尊号真像銘文』『一念他念文意』『唯信証文意』など数多い。なお、明治9年（1876）に見真大師を諡おくりなされている。
『浄土真宗辞典』より
